CMJK ピコリン、最近もてもてだそうじゃん。
ピコリン え?
CMJK ファンと飲みに行ってるんだろ?
ピコリン ああ、ありましたね。
CMJK ファンと仲良くするのはいんだけどさ、あんまり仲良すぎる感じになっちゃうと新規のファンは入りづらくなっちゃうんじゃない。
ピコリン そんなことはないでしょう。
CMJK 悪気がないのはわかってるんだけどさ(笑)。いまはまだいいんだけど人数が増えちゃったら大変だぞ。行くのはあなたとあなたとあなたで、他の人はお断りってわけにいかないんだから。
ピコリン そんなに大人数にならないですよ。たまたまtwitterで友達のお店を紹介して、ここに行こうって何人かと行っただけですもん。
CMJK そう、いまはいいんだよ。これからファンが増えていったときにどうするって問題だから。

――と、人気過熱中のキュートメンですが、ついに第二弾シングルのリリースですね。

CMJK 人気過熱って…(笑)。

――でも、前回のファースト・シングル「Born To Love You」リリース記念のライヴはほぼ一日でチケットがソールド・アウトだったでしょ。会場の外に「チケット譲ってください」って書いた紙持ってるファンが何人もいたし。

CMJK あれはちょっと予想外でした。むしろライヴの発表の直前まで「お客さんが入らなかったらどうしよう」ってびびっていたぐらい。なのでちょっと若者の人気と力に頼ろうと思ってタイチマスターとホンダレディを呼んだぐらい(笑)。

――会場ももっと大きくていいのにと感じたぐらいぎゅうぎゅうで、本人たちもあれほど過熱するとは思ってなかった?

ピコリン なかったです。
CMJK ピコリンが一緒に飲みに行ってる20人ぐらいしか来ないんじゃないかと(笑)。
ピコリン 引っ張りますね。
CMJK その20人は絶対に来るよな?(笑) ま、それはともかくチケットを発売したときは新曲もまだ公開していなくて、なんにも情報がない段階だったので、あれほど早く完売するなんて予想もしてなかったですね。

――結果、リリースされた新デビュー曲「Born To Love You」もiTunesのエレクトロニックのチャートで2位という好結果だったし。

CMJK いやあ、ありがったかったですね。ありがたいし、うれしい。ピコリンの飲み友達しか買ってくれないんじゃないかって不安もあったし。
ピコリン ……引っ張りますね。

――(笑)で、その好結果を受けて今回はセカンド・シングルとなる「Celebration」、カップリングの「Loser」の2曲が発表されます。どちらもいい曲ですけど、まず「Celebration」から。この曲は最初からセカンド・シングル用の曲として作られた?

CMJK そうです。

――ファースト・シングルの「Born To Love You」同様、ディストピアな未来のストーリー仕立てですね。

CMJK と、同時にすごくポップに聴こえるようにも作ってます。あんな世界観なのに。パッと聴きでは多幸感を感じてもらえる曲にしたいなと、そういう作り。あとはリリースの時期も考えて夏っぽい雰囲気も盛り込みたかった。

――90年代初期の古き良き、ハッピーだったハウス・シーンを思い起こさせるような曲調でありながら、詞は実はそうじゃない。

CMJK 歌詞に関してはそもモチベーションの出所は「怒り」だったりするんです。

――怒り?

CMJK そう。それは「Born To Love You」もそうだったんですけど、人類がいまのままだったら、地球最後の日までいがみあったままなんじゃないか、それはないだろうという怒り。EUの難民問題のニュースとかを見ていても、それをすごく感じたんです。キュートメンって昔から歌詞は説教くさいので(笑)、キュートメンらしいってことでもありますが。
ピコリン ですよね。
CMJK 歌詞は説教くさいけど、曲はポップ。90年代初めにぼくらキュートメンが世に出られたのは、まちがいなくハウス・ミュージックのおかげです。ぼくらのルーツにはニューウェイヴやインダストリアル・ミュージックなどいろいろなものがありますけど、同世代に同じようなルーツを持ったすぐれたアーティストがいっぱいいた。たとえば先日亡くなった森岡賢さんが在籍していたソフトバレエなどもそう。同じ土俵で勝負してもかなわない。ピコリンですら、当時、新曲ができるたびに同世代のバンドの作品とくらべてどうだろうなんてことを気にしていたぐらい。
ピコリン え、そんなことないですよ。
CMJK いや、そうだったよ。けっこう意識してた。
ピコリン え~。
CMJK で、そういう中で、我々の武器はやはりハウス・ミュージックだったんです。これなら他の同世代バンドに負けないという自負もあった。今回、「Celebration」で90年代初期のハウスの雰囲気が色濃く出ているのは、我々なりのハウスへの恩返しという気持ちが強いんです。ハウスが持っているオープンな感じ、おおらかでせせこましくない精神というのをもう一度呼び戻したいなと思ったんです。

――オープンな精神というのは、歌詞のモチベーションとなったいがみ合う人類という現状と対になったものですね。

CMJK そうなんです。

――最近のペット・ショップ・ボーイズなんかも90年代の幸福なクラブ・シーンを追憶した曲をよく作っているし、これは世界的な傾向なのかも。

CMJK ジョルジオ・モロダーの最新のアルバムも四分打ちを使ったそういう雰囲気のある曲でしたもんね。

――世界がどんどん暴力的になっているから、音楽でそれに対抗したいという集合的無意識なのかも。

CMJK ですね。

――ところで、前作の「Born To Love You」はピコリンの気持ちになって歌詞を書いたとのことだったけど、今回の2曲は?

CMJK 今回は2曲とも自分自身が思っていることを歌詞にしました。ただ、自分じゃなくてピコリンが歌ってくれるから、自分の言葉をより強くストレートに出せる。自分が歌うなら、気恥ずかしさもあってあんなに真っ正面の表現にはしにくいんです。
ピコリン でも、前回もそうだったんですけど、今回もデモを聴いて、これ潤さんが歌ってもいいのになあ。コンフュージョン版もありなんじゃないのって思いましたよ。
CMJK ないよ!(笑)
ピコリン でも、それぐらい完成したデモだったんです。

――「Born To Love You」は歌っている主人公がピコリン自身と被るところが多いキャラクターだったけど、今回はもっとメッセージ性が強くて、歌うときにはどう歌おうと考えました?

ピコリン それは前回とあまり変わらなかったりします。
CMJK さすがに歌詞を書くときに、ピコリンはこんなこと考えもしないだろうなっていう言葉や表現はしてないので。
ピコリン そう。潤さんらしい曲だな、これは潤さんにしか作れない曲だなって思って。詞も曲もアレンジもそう。また怒られると思うんですけど(笑)、ぼくが大好きだったコンフュージョンっぽい曲とアレンジだなって。
CMJK キュートメンのために書いた曲なんだからさ!(笑)
ピコリン キュートメンは自分がかかわっていたから、解散の後は聴けない時期も長かったんですよ。でも、コンフュージョンは素直に好きでいつでも聴けた。だからコンフュージョンのファンだし、自分の中にそういう要素が好きという感覚が柱としてあるんです。コンフュージョンに込められていた潤さんの気持ちというのが大好きで、今回もそれを感じたんです。
CMJK ええ~。いや、思うんだけど、それは単純に時間軸的な錯覚だと思うよ?
ピコリン ?
CMJK だって、まずキュートメンがあって、その後にコンフュージョンがあった。自分で言うのもなんだけど、やっぱり自分は時々で変わっていったり成長したりもあると思う。考えも変わるし、その時々の自分が作品には出る。そういう意味で、キュートメンよりもコンフュージョンのほうが後、つまりいま現在の自分に時期的に近いのは後のほうのコンフュージョン時代で、それでピコリンはいまのぼくの曲にキュートメンよりもコンフュージョンを感じるってことだと思う。
ピコリン そうなのかなあ。

――「変わる」っていう意味では今回のカップリングの「Loser」。これはCMJKの新機軸的な1曲ですね。

CMJK ですね(笑)。最初に曲ができたとき、聴かせる前にピコリンとレーベルの社長から新しい曲ってどんな感じ? って訊かれたんですよ。それで素直に「Aメロがジャズで、歌い出しが“目玉焼きになにをかけるか~?”って歌詞です」って言ったら、ふたりが半泣きみたいな顔になっちゃって(笑)。
ピコリン (笑)
CMJK あのときすごい不安そうな顔だったよな(笑)。
ピコリン そうそう。でも冗談だろうって気持ちもあったんですけど…。
CMJK 本当にそうですよって念を押したら、半泣きが本泣きの表情になって(笑)。

――ま、それぐらいインパクトがある曲ですよね(笑)

CMJK このあいだ信頼している音楽仲間の後輩に、飲み屋でちょっと聴かせたんですよ。そしたら、その後輩が怒っちゃって。

――え?

CMJK こんなことやっていいんですか! 許されるんですか! って怒られました(笑)。
ピコリン (爆笑)
CMJK たしかに物議を醸すのはまちがいないっていうのはわかってたんですけど、後輩に怒られるほどとは思わなかった(笑)。
ピコリン ぼくはとにかく、ジャズよりも歌い出しの「目玉焼きになにをかけるか~」っていう歌詞がすごいなと思って。え、普通に醤油じゃないの? とも。
CMJK 醤油なんかかけないよ。
ピコリン え? って。
CMJK おれはケチャップなんだよ!
ピコリン ええ~って。
CMJK そこで争いが生まれたよな。だからジャズに合わせて、みんなが自分が当たり前だと思っている常識をぶち壊す歌詞なんだよ(笑)。

――で、歌詞とジャズで唖然としていると曲が進行するにつれてエレクトロニック・ボディ・ミュージックになってきたり(笑)。アレンジで遊ぼうというのが最初から明確だった?

CMJK でした。聴いた瞬間はずっこけソングかなあと思わせておいて、実はめちゃくちゃシリアスな曲になっていくようなものにしようと。本質はシリアスな暗めの曲なので、最初のインパクトでつかもうと思ったんですね。どうつかもう、よし、最初ジャズにしちゃえって。

――前回のカップリングの「Gasoline Car」も歌い出しのところのキーをいちばん高くするっていう、プロの音楽業界ではありえない、禁じ手のようなアレンジにしたでしょ。カップリング曲はやはりそうした冒険の場という一面もある?

CMJK それはありますね。

――ニューウェイヴ精神ですね。

CMJK そう、そうしないと気が済まない。やっぱり、そういう実験的なカップリング曲が入っているシングルばっかり聴いて育ってきましたからね。感覚的にはむしろこれが普通だろうぐらいの気持ち。
ピコリン ぼくも実際に曲を聴いたときは、おお、こう来るのか! って興奮しましたよ。歌入れは難しかったですけど。
CMJK そう? どっちかっていうと「Celebration」よりも「Loser」のほうがピコリンらしい歌い方の曲だと思うけどな。歌詞も、ぼくの気持ちではありながらもピコリンが歌ったほうが説得力のあるものになっていると思うし。

――実はシリアスな曲っていうのも曲が進むに連れてどんどん明らかになっていって…。

CMJK ぼくが最初にイギリスにいった90年代とかは、まだ北アイルランド紛争が盛んな時期で、ロンドンでもバスや建物が爆破されてたりしてた。でも、その後、イギリス政府は爆弾闘争をしていたIRAにも議席を与えて融和の道を作ったじゃないですか。ぼくはそういう発想ってすごく大事だと思うんです。いまはみんなそういう融和の精神を忘れてるんじゃないかと。

――そういう意味では「Celebration」も「Loser」もメッセージとしては同じ方向を向いているんですよね?

CMJK そうなんです。この方向がやがてアル…、いや、その話はまた今度。

――アル~?(笑)

CMJK (笑)

――そのいい話も、きっと近々教えてもらえるんでしょう。

CMJK ちょっといろいろあるんですが、発表できる日も近いと思います(笑)。

――楽しみにしています。

(取材・構成:吉村栄一)